トレンドをつかむ「読み替え→類推」!

◆「読み替え→類推」も大事な定石です

 

 「読み替え→類推」。真ん中の矢印からなんとなく、内容の雰囲気は分かっていただけるかと思いますが、これも「組合せ」や「減らし」に匹敵する、発明のための有効な定石です。

 

 具体的に、「読み替え→類推」とは、発明しようとしている「発明分野」とは異なる「参照分野」の発明から特徴を抽出し、抽出された「特徴パターン」に基づいて、「発明分野」の製品・サービスを、今までにない製品・サービスに「読み替え」ていく思考作業です。

 

 1つの例として、架空の話ですが、替え刃という消耗品で稼ぐことで有名なジレット社の製品・サービスを「参照分野」として、ジレットモデルという「特徴パターン」を抽出し、これに基づいて「発明分野」である「特殊な研磨剤を用いた研磨システム」を、新たな製品・サービス(たとえば研磨剤カートリッジ周りのインタフェースを含む形態)に「読み替え」た発明、というのが考えられます。

 

 また、昆虫を「参照分野」として、蚊の針の構造という「特徴パターン」を抽出し、これに基づいて「発明分野」である医療用注射器の針を、斬新な構造を有する注射針に「読み替え」た発明は実際に存在し、マスコミでもよく紹介されています。いわゆるバイオ・ミメティクス(生物模倣)です。

 

 そしてこの「読み替え」に次いで、「参照分野」における、その「特徴パターン」の実際の進展・進化を調査・参照し、その進展・進化の方向から、読み替えた「発明分野」の製品・サービスに付加すべきプラスアルファを「類推」していく、このような思考作業が「読み替え→類推」になります。

 

 この「類推」の具体例としては(さきほどの架空話の続きですが)、「参照分野」であるジレット社の製品・サービスにおけるジレットモデルのその後の進展・進化を調査・参照し、その進展・進化の方向から、「研磨剤カートリッジのインタフェースを機能グレードに応じて変化させる!」というプラスアルファを「類推」して付加する、なんていうのが考えられます。

 

 このような例からも想像されるように、たとえば今話題のIOT、AIや、フィンテック関連のビジネスモデル発明のような、技術分野・業界を横断する斬新な発明を創り出そうとする際、「読み替え→類推」はかなり使える定石となります。特に、「読み替え」ることによって斬新な、かつ「類推」することによってその分野のトレンドに乗った(又はトレンドをつくる)「使える特許発明」を創り出せる可能性が高まるのです。

 

 たとえば、同じビジネスモデルを採用した互いに異なる2つの「業界」では、先行「業界」での形態変化から、後発「業界」での将来形態を予測することが可能となります。「読み替え→類推」は、この先行「業界」で起こっているトレンドが後発「業界」でも頭をもたげる、それを先取りして特許を取得する手法でもあるわけです。

 

 以上ご説明したように、「読み替え→類推」は、「組合せ」や「減らし」とともに発明のための重要な定石となりますが、では、これらの3つの定石の関係は、どのように捉えることができるでしょうか。

 

 このブログ第1話で、言語化・ブロック化による発明創作のお話をしました。この言語化・ブロック化(図面化)は、まさに製品・サービスに対する1つの「抽象化」です。またその第1話では、この「抽象化」した製品・サービスにおける不要な構成要素を除いたり、他の技術要素を付加したり、ある構成要素を他の技術要素と取り替えたり、さらには構成要素同士を置き替えたりする思考作業が重要であることもご説明しました。

 

 このように、構成要素を除いたり、付加したり、取り替えたり/置き替えたりすることは、それぞれ、ここまでご紹介した発明定石である「減らし」、「組合せ」、及び今回の「読み替え→類推」に相当する(含まれる)思考作業となっているのです。

 

 また、同じくブログ第1話で、全体を一挙に完成させたとしか思えないアーチ状レンガ橋のタイプの「発明」についてもお話ししました。実は、このレンガ橋タイプの発明も、「読み替え→類推」によって創り上げることができます。「読み替え→類推」は、上述したように、「参照分野」の発明技術に基づいて「発明分野」での技術を新たな発明に「読み替え」ることを基本としています。ここで、「参照分野」におけるレンガ橋タイプの発明技術に基づき、一挙に新たな発明への「読み替え」が行われることによって、レンガ橋タイプの「発明」が完成するのです。ちなみにこれは、思考空間という「宇宙」では足元から積み上げずとも、すでに宙を舞っている技術をまねて一挙に発明できる!といったイメージでしょうか。

 

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◆「読み替え→類推」:具体化→抽象化

 

 では、「読み替え→類推」の思考作業を、具体化→抽象化(→抽象化)→読み替え→類推、といったようにいくつかの段階に分けた上で、各段階について詳しくご説明していきます。

 

 最初に、「参照分野」の製品・サービスを「具体化」して理解します。ここでは、その製品・サービスの構成を、できるだけ詳細に具体化することが大事です。参照すべき製品・サービスから適切な「特徴パターン」を抽出するために、その前の徹底した「具体化」による構成の理解が好ましいということです。

 

 たとえば、「参照分野」の製品・サービスを特許公報から取り出してくる場合を考えます。その特許公報、すなわち特許発明の明細書には「実施例」(又は詳細な実施形態)が記載されています。この明細書中の「実施例」をしっかり読み込んで具体的に理解することが大事となります。

 

 もちろん、特許公報の特許請求の範囲には、すでに出願人が「抽象化」した「特徴パターン」が記載されてはいます。しかし、「発明分野」で読み替えるために抽出すべき「特徴パターン」が、その請求項の記載通りとは限りません。ですから、特許請求の範囲も参照すべきですが、「実施例」はどうしても見逃せないのです。

 

 ちなみに、「参照分野」の製品・サービスにおいて具体化すべきものとしては、「製品・サービスで採用されている手段(構成要素)」の他にも、たとえば、「製品・サービスで取り扱うもの」、「ユーザにとっての効果」、「事業者にとっての効果」などが挙げられます。

 

 次いで、この「具体化」された構成を「抽象化」します。上位概念化するといってもいいです。この抽象化を行う際、「そもそも何(What)が欲しいのか?」、「そもそも何(What)をしたいのか?」におけるwhat、すなわち「コンセプト」が明確であることが重要です。「コンセプト」が明確であってこそ、「参照分野」の「具体化」と、「発明分野」の「読み替え」とを仲介するのにふさわしい「抽象化」が行えるのです。

 

 ですが、実際には、この「抽象化」によって、より適した新たな「コンセプト」が明確になる場合も少なくありません。1つの例として、Amazon社のネット小売システムを「参照分野」として、「発明分野」である「駐車・駐輪スペースのオンデマンド提供サービス」のための発明を創り出そうとしている場合を考えます。

 

 ここで、「抽象化」によって、充実したレコメンデーションを備えたロングテール販売モデルという「特徴パターン」が抽出できたとすると、これはまさに、Amazon社のビジネスモデルそのものであり「コンセプト」に他なりません。これにより、たとえば、「個人宅や企業敷地内の駐車スペースをオンラインでレコメンドする機能」に「読み替え」る!といったことが実現するのです。この場合、「参照分野」から適切な「コンセプト」をも創り出したことになります。

 

 さらに、「抽象化」すべきは、製品・サービスにおける構成要素の1つ1つに限定されません。たとえば、製品・サービスにおける構成要素の関係、配置、構成、時間的つながり、順番、すなわち、要素群における空間的、時間的、属性・意味論的関係を抽出することも大事です。特に、時間的関係や、属性・意味論的関係を抽出できれば、目に見えない分だけ特許性(進歩性)の生じる可能性が高まります。

 

 また、「抽象化」して得た「特徴パターン」をさらに「抽象化」する場合もあります。「抽象化」をどこまでやるかは、ケース・バイ・ケースです。たとえば、1回目の「抽象化」で、あるビジネスモデルの具体例が抽出され、2回目の「抽象化」で、教科書に載っているような典型的ビジネスモデルになる、ということも考えられます。この場合に、1回目の「抽象化」で得たパターンに基づいて、「読み替え」を行った方がより面白い発明になることもあるでしょう。さらに言えば、一度「読み替え」て創り出した発明を、さらに一段「抽象化」して「発明」として完成させる場合もあり得ます。

 

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◆「読み替え→類推」:読み替え→類推

 

 次いで、抽出された「特徴パターン」に基づいて、「発明分野」の製品・サービスを、今までにない製品・サービスに「読み替え」ます。多くの場合、「発明分野」の具体的な製品・サービスの主要構成要素を、抽出した「特徴パターン」の観点から「読み替え」ていきます。

 

 1つの例として、上述したように、「特徴パターン」としてのジレットモデルに基づいて、研磨装置の研磨ディスクに設置されたノズル付きの研磨剤供給デバイスを、「デバイス本体及び本体側インタフェース、ならびに研磨剤カートリッジ及びカートリッジ側インタフェース」に「読み替え」ることができます。たとえば、この両インタフェース部分に技術的特徴をもたせることができれば、ジレットモデルという「コンセプト」を実現する「使える特許発明」を取得することができそうです。

 

 また、「読み替え」は、ある意味では、自由におおざっぱに、すなわち論理的ではなく直観的に、したがって楽しく行うことも必要になります。たとえば、「水平面内での振動」と「鉛直方向での振動」との組合せが「特徴パターン」として抽出された場合に、では、「情報」における「水平面内/鉛直方向での振動」とは何なのか?を自ら想像し決めていく、なんていうこともあり得るのです。このような「読み替え」に成功することも、「使える特許発明」を創れるかどうかの1つの条件となります。

 

 さらに言えば、「抽象化」して得た「特徴パターン」を、抽出元の発明の製品・サービスに「読み替え」ることもあります。すなわち、当初から「参照分野」として、「発明分野」自体を用いて進めていくということです。この場合、改良発明や、新たな原理・メカニズムによる発明が完成することも考えられます。

 

 最後に、「読み替え→類推」の締めとなる「類推」をご説明します。具体的には、「参照分野」における、抽出した「特徴パターン」の実際の進展・進化を調査・参照し、その進展・進化の方向から、読み替えた「発明分野」の製品・サービスに付加すべきプラスアルファを「類推」します(少なくとも出願明細書中にそのプラスアルファを記載しておきます)。

 

 実際に、特許審査において審査官から、単純に「読み替え」ただけの、容易に思いつく発明であると認定されそうになっても、この最後の「一工夫」であるプラスアルファを付加することによって、特許が認められることも少なくないのです。

 

 一般に、ビジネスモデル発明は、従来のビジネス体系をクライアント・サーバシステムに「読み替え」たものということができます。その「読み替え」によるビジネスモデル発明において、その従来ビジネスでの進展・進化に基づいて発明技術の進展・進化を「類推」し、その進展・進化した形態まで含めた又は含め得る「発明」を創り上げてしまった上で出願することがとても重要となります。これにより、その業界でのトレンドに乗った「使える特許発明」が他に先がけて取得可能となるのです。

 

 たとえば、スポンサーがその入札額に基づいて番組CM枠の放送権利を取得する「番組オークション」というビジネスを考えてみます。このビジネスをクライアント・サーバシステムに「読み替え」たビジネスモデル発明が、実際に特許(特許第5793538号)となっています。

 

 ここでは、「番組オークション」における1つの進展・進化形態である「プロダクトプレイスメント(動画本編に広告を表示する手法)広告枠の提示」を、「読み替え」たネットオークション・システムにおいて「類推」して1つの特有の形にし、これにより、業界のトレンドに乗った「特許発明」が取得されています。

 

 具体的には、制作された「コンテンツと異なるコンテンツとして広告が表示される広告枠に広告を表示することができ、かつ、当該広告枠に表示される広告を差し替えることができる権利」と合わせて、「プロダクトプレイスメントにより広告が表示される広告枠に広告を表示するができ、かつ、当該広告枠に表示される広告を差し替えることができない権利」をも落札対象に加えることで特許が認められているのです。

 

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◆「読み替え→類推」でもAIには負けないぞ!

 

 このブログ第10話で「組合せ」についてご説明した際に、「思考(ニューラル)ネットワーク」と「環境(ソーシャル)ネットワーク」とが連携して機能することで、「組合せ」の発明が創り出されるお話をしました。

 

 ここで、「思考ネットワーク」は発明者の頭脳(及び頭脳にとっての情報インタフェース)です。一方、「環境ネットワーク」は、発明者とその環境とをつないでおり、発明者に対して発明のための情報を提供可能な様々なタイプのネットワークです。

 

 この2つのネットワークの考え方は、「読み替え→類推」でも使えます。具体的には、「参照分野」を見出すのは「環境ネットワーク」を介してであり、この「環境ネットワーク」は、発明者からすれば自らの思考とはかけ離れた、ある意味「突飛」な情報を提供してくれます。また、「類推」することのできる情報、言ってみれば「未来」のための情報の情報源にもなります。

 

 そして、「環境ネットワーク」で得られた「参照分野」の情報から「特徴パターン」を抽出して「読み替え」及び「類推」を行うのは、「思考ネットワーク」の役割です。「思考ネットワーク」は、その多くが論理的であり、入力された情報に対してはある意味「堅実」に処理を行います。

 

 また、「思考ネットワーク」は「類推」もしますが、それはあくまで、同分野の「過去」の情報を処理した結果としての予測となります。この点、「思考(ニューラル)ネットワーク」を模倣した今話題のAI(人工知能)がどんなに突飛な(今の人間には理解できない)囲碁の妙手をあみ出したとしても、その意味では1つの分野における十分に「堅実」な手であるといえるでしょう。

 

 すなわち、どのような妙手といえども、所詮、囲碁という「発明分野」の情報を処理した「思考ネットワーク」からのアウトプットであるということです(ただし、Google DeepMind社のアルファ碁は、他のアルファ碁(思考ネットワーク)との対戦を数多く経験しており、それらの対戦相手が「環境ネットワーク」もどきのように作用している可能性はあり得ますが)。

 

 ちなみに、以上の説明からすると、「読み替え→類推」の大部分は「思考ネットワーク」の産物のように見えますが、実際は、「環境ネットワーク」内で、発明者がどのような「参照分野」の情報を取得するかが、決定的に重要となるのです。特に、その情報は「環境ネットワーク」由来であるが故に「突飛」である方がよい場合も少なくありません。「突飛」であることが後々、発明の進歩性を生じさせ、特許化に貢献してくれるからです。

 

 この点、発明者にとって「発明のアイデアが降臨した!」と感じられるのは、多くの場合、「思考ネットワーク」で「読み替え」ができたときかもしれません。しかし、その「降臨」を決しているのは、「環境ネットワーク」内から取り出す情報の良し悪しであり、「環境ネットワーク」から何を取り出すかという発明者の直観やセンスではないでしょうか。

 

 次に視点を少し変え、「読み替え→類推」についてAIとの比較をさらに考えてみます。「読み替え→類推」における「抽象化」の思考作業は、ある意味、基となる「参照分野」の発明と、「発明分野」で創ろうとしている発明との「共通した技術的特徴」を先取りして直観的に見つける行為だと捉えることもできます。

 

 たとえば、架空の話ですが、今話題のスーパー生物であるクマムシを観察して、「生鮮食品を砂漠や月面上に放置しても保存可能にする食品加工方法」を発明しようとする際、他のほとんどの生物には見られないクマムシ特有の特徴である「極めて乾燥した環境でも生存する」ための構造や「真空中でも生存する」ための構造を抽出することは、結局、クマムシと、生鮮食品加工発明との「共通した技術的特徴」を見出す行為といえます。

 

 このように、「抽象化」は、共通する「特徴パターン」を直観的に先取りする行為だとすると、「参照分野」を何にするか、また、「参照分野」の何を具体化して、どのように抽象化するかを決定することが非常に大事だと考えられます。

 

 この決定は、ある意味、膨大な選択肢を有し大変な作業とはなりますが、その分、「読み替え→類推」の発明手法には、無限の可能性があるとも言えます。あくまで私の意見ですが、このことを考えても、AIには「読み替え→類推」を行うことは、まだまだ難しいのではないかと思われます。

 

 結局、「読み替え」に適した「参照分野」での技術を上手く「抽象化」して、新規の「ビジネス・仕事」そのものを創り出すことは、今までにない又はより上位の活動目的・活動目標を創ることであり、AIには到底まねできないのではないでしょうか。「発明」においては、まだまだ、人間様が主導権を握り続ける余地はありそうです。

 

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◆ビジネスモデルと「読み替え→類推」

 

 以上、発明定石「読み替え→類推」について詳しくご説明しましたが、この定石を用いる際、「参照分野」から「特徴パターン」を抽出するのではなく、すでに1つの業界で認識されているビジネスモデルなどの上位概念を直接用いて、当初から「読み替え」を行う場合もあり得ます。

 

 このように、既存の使えそうなビジネスモデルに基づいて、または、新たに考案したビジネスモデルに基づいて、「発明分野」の製品・サービスを「読み替え」、新規の発明を創作することは、今までも行われてきたことであり非常に有効なやり方といえます。特に、様々な技術分野・業界を横断した発明となりやすいIOT、AIや、フィンテックが関連する発明では、多くの場合、ビジネスモデルの「読み替え」がそのベースとなりそうです。

 

 既存のビジネスモデルとしては、たとえば、非売れ筋商品で儲けるロングテール・ネット販売や、消耗品・付属品で稼ぐジレットモデル、オンライン(ネット上)での行動からオフライン(実店舗)での行動へと顧客を誘導するO2O(オーツーオー)や、無料提供を基本とするフリーミアム、さらには、従量制の課金を行うペイアズユーゴー(Pay as you go)モデルなどが有名です。

 

 日頃から、このようなビジネスモデルの特徴・パターンを頭に叩き込んでおき、または、そのビジネスモデルの「特徴パターン」をさらに抽出しておき、その上で「読み替え」にトライすることが重要となります。ここで、難しく考えずに、とりあえずビジネスモデルを1つ選んで「読み替え」てみることも良いかもしれません。この点、以前にもお話ししたように、とりあえず2つの発明技術を「組合せ」てみることも大事であるのと似ています。

 

 ちなみに、新たなビジネスモデルを適用し「読み替え」によって新規の「発明」を創作した場合、その発明による製品・サービスは、当初、低品質であったり、再現性が低かったりする場合も少なくありません。

 

 たとえば、新しい「養殖販売」というビジネスモデルを、天然採取に頼っていた真珠業界に適用した御木本幸吉の養殖真珠の発明「真珠素質被着法」(特許第2670号)は非常に有名です。この特許の出願時での半円真珠の養殖成功率は、1~2%程度であったと言われています。それでも、その後の真円真珠の養殖方法の発明を経て、御木本真珠のビジネスが世界に羽ばたいたことは周知の通りです。

 

 このように、新しいビジネスモデルに基づいて「読み替え」た発明のビジネスも、そのビジネスモデルのベースとなる「技術」の進展によって、次第に成功の道を歩むことはよく見られることです。

 

 たとえば、携帯電話網や無線LANを用いた無線通信技術をベースとする様々なビジネスモデルが、無線通信技術における通信速度・容量や通信品質の向上に伴って、段階的に成功を収めてきたことはよく知られています(もちろん、アイデアは先進的であったが、当時、無線通信技術がそこまで追いつかず、結局、日の目を見なかった発明・ビジネスも山ほどありますが)。

 

 また、IOT技術の開発によって、今後、リアルタイムの且つ局所的な稼働率や在庫が分かることを利用したビジネスモデルが、数多く生み出され、そのうちのいくつかが、IOT技術のさらなる進展・進化を待って最終的に大成功を収める、ということも十分に予想されます。

 

 そのような状況では、発明定石「読み替え→類推」を用い、先手を打って、今後のトレンドを押さえた「使える特許発明」を獲得しておくことが決定的に重要となるのではないでしょうか。

 

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